豪雨はいきなりやって来た。
ひどい雨音の中にやまんばの声がかすかに聞こえて来る。「クーちゃん・・・クーちゃん・・・」今出る訳にいかない。 やまんばだって傘をさして出たのにたちまちずぶ濡れになっている。やまんばは雨にたたきつけられながら
側溝の出口にネットを括り付けた。・・・・
十数年前、やはり大雨で側溝の水が溢れんばかりに一杯になった時、側溝を隠れ家にしていたチビタンが流れて行ったのを大雨になるたびやまんばは思い出すんだ。 チビタンはやまんばもどうしようもないほど凄い勢いで流れていったにもかかわらず自力で這い上がって来た英雄だ。「おばあさん猫なんだよ。奇跡としか思えない。」
やまんばは服を着替えると又、「クーちゃん!クーちゃん!」と呼んで歩く。出て行ける訳ない事はやまんばもわかっていた。でも僕はやまんばの声で「ヨッシ!もう少し小降りになったら帰るぞ!」勇気が湧いて来るんだ。 「クーちゃん!クーちゃん!」何度か聞くうち小降りとなり、僕は走って帰った。「よく帰ったね!」やまんばは僕の体を撫で喜んだ。僕は以外にも少し毛が濡れてる程度だった。「クーちゃん、何処で雨宿りしてたの?お利口さんや!」タオルを持って来ると僕の体を拭いた。そして晩ごはんを食べてる僕に「クーちゃん、怖かったなー。カミナリは凄いし、こんな雨初めてかも知れんね。頑張ったね。」 フー ! ヤレヤレ!
次の日、僕は遠くには行かず縄張りの近辺にいた。そして夕刻には自分からゲージに飛び上がった。やまんばに褒められたよ。「クーちゃんは賢いな~」 やまんばは家に入っても皆に僕の事、自慢していた。「やっぱ、クーちゃんは賢いわ~」
そして又、次の日は朝から酷い雨と風で僕は一日ゲージの中だった。やまんばはこんな日はキツネ、モフちゃん、ミケ、ガりコそしてハトさんは何処に身を寄せているのだろう?心配した。
植木鉢が落ちないように紐を巻きつけフェンスに括り付けた。
ソテツが倒れないように紐で柵に括り付けた。
人形が倒れて壊れないように倒しておいた。
伝説の英雄!亡きチビタン
豪雨の時はブロックギリギリまで水嵩が増す。この側溝をチビタンは凄い勢いで流れて行ったんだ。どうやって何にしがみついたのかチビタンは這い上がって来たんだって。「すごいよなー」
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