台風が去って「みんな頑張ったよ。」

台風が去ると僕の倉庫の戸が外された。僕は夕刻の散歩の後、倉庫に戻るのが嫌でなくなった。自分から飛び上がって入るんだ。風が通り抜けて行く。「気持ちいいなぁ。もっと早く外してほしかったな。」

僕の住んでるところは、いつも被害を受ける所ではないんだけど僕んちの被害と言えば屋根まで上がっていたキュウリのつるが落ちて来てしまい、せっかく人口受粉した1号、２号が分からなくなってしまったんだ。ほかの皆はペンタス
ガザニア、にベゴニア。フェンスの外で強い風、叩きつける雨に折れることなく、倒れもせず頑張ったみたいで前と同じ顔を見せてくれている。いや、前より誇らしげでたくましく見えるよ。それからキュウリ以外の夏野菜、ナスにミニトマトつる紫。他、以上なし。みんな頑張ったよ。

「ほら、頑張ったね。たくましくみえるよ。」

「あーあ！せっかくやまんばが受粉したキュウリがどれかわからなくなってしまった。」

「倉庫の戸を外して貰って快適‼」

「クーちゃん、中だって暑いのよ。」

「どお、かわいい？オジサンが撮ったんだ。」

「私はリボンなんかつけなくても充分よ！」

「ほらね、やまんばに『淡谷のり子』って言われたわ。」