別れの時「タラちゃん、何処へ行くんだ?」

お昼過ぎ、タラちゃんはお爺さん、オジサン、やまんば、皆にダンボール箱の中を覗き込まれ、車に乗せられ家から出て行った。僕たちには覗かせてくれなかった。  誰も言葉を交わさない。 ・・・・・・・・・家の中を淋しさがよどんでいる。
盲目のタラちゃん、十六年間、勇気と感動の生きざまを見せてくれてありがとう。 「がんばったね。」
やまんばは十六年前、「安楽死」を考えた事を詫びた。・・・・・・・・・


今でも、りょうちゃんのヤツ廊下に出てはキョロキョロ探すんだよ。

「これでお腹の毛玉のお掃除。あたいは溜まりやすいんだ。」

「シンクロ!」

「シンクロの披露もこれでおしまい!」

「りょうちゃん、重いよ!」

「あたいは目が見えなくても外が大好き! 太陽の光、心地よい風、土の匂い、草の匂い。お母さんと一緒にいた時の懐かしい匂いなんだもの。それに、やまんばの肩に乗れば何処へでも行けちゃう。駐車場に草を食べに行ったり、この間、病院にもキャリーバッグが足りなくて、やまんばの肩に乗って行ったんだ。だから目が見えなくても全然、平気だったよ。」  
・・・・・・・・・「ありがとう。やまんば、お爺さん。」 「ありがとう。オジサン、皆んな!」
「ありがとう。りょうちゃん。りょうちゃんがいたから楽しかったよ。 りょうちゃんと一緒だったから頑張れたよ。」

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